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旅する私の「ワーケーション」革命。働く場所を自分で決めるということ

2025.08.10
キャリア・教育

ある朝の違和感

あれは、多分、30歳を目前にした、何の変哲もない夏の朝だった。 スマホのアラームが鳴って、飛び起きる。慌ただしくシャワーを浴びて、メイクをして、決まったスーツに袖を通す。最寄りの駅まで小走りで向かい、満員電車に乗り込む。窓の外はいつもと変わらない、灰色の空とビルの群れ。

「あぁ、今日もか」

心の中で、そんなため息がこぼれた。 別に、仕事が嫌いなわけじゃない。むしろ、自分の仕事には誇りを持っていた。でも、この繰り返しの日々に、なんだか、心が追いつかなくなっているのを感じていた。 まるで、誰かが決めたレールの上を、ただただ走らされているような感覚。 このレールは、一体どこへ向かっているんだろう。そして、このレールの上で、私は本当に私らしくいられるんだろうか。

そんな違和感が、小さなひび割れのように、私の日常に広がり始めた頃だった。


働く場所を「選ぶ」ということ

会社を辞めて、フリーランスになった。 そして、パソコンひとつで、どこでも仕事ができるようになった。 これが私の「ワーケーション」革命の始まりだった。

最初から、「世界中を旅しながら働こう!」なんて、壮大な夢を抱いていたわけじゃない。 ただ、家で仕事をしていると、どうしても気分が乗らない日があって。 そんな日は、近所のカフェに行く。いつもの席じゃなくて、窓際の一番日当たりのいい席を選ぶ。コーヒーを淹れる音、誰かの話し声、窓から見える街並み。そんな雑多な音や景色が、不思議と集中力を高めてくれた。

ある時、ふと、隣の駅のカフェに行ってみようと思いついた。 いつもの街とは違う、少しだけ見慣れない景色。 それだけで、なんだか心が軽くなった。 その日、私は気づいたんだ。「働く場所を自分で決める」ってことは、気分転換以上の意味があるってことに。

それは、「自分の人生の主導権を、自分の手で握る」ということだった。


「ワーケーション」は、新しい日常

「ワーケーション」って言葉は、少し大げさに聞こえるかもしれない。 でも、私にとってそれは、非日常のイベントじゃなくて、新しい日常そのものになった。 金曜日の午後、仕事が一段落したら、そのまま新幹線に飛び乗る。 向かう先は、その時の気分で決める。海が見たければ、湘南へ。温泉に入りたければ、箱根へ。 土曜日の朝は、いつもより少し早く起きて、散歩をする。潮風の匂いを感じながら、砂浜を歩いたり、山道を登ったり。 そして、午前中だけ仕事をする。

誰かに管理されるわけじゃない。 「今日中にこの仕事を終わらせたら、夕日を見に行こう」 「この資料を作り終えたら、地元の美味しいものを食べに行こう」 自分で自分に、小さなご褒美を設定する。 そうすると、不思議と集中力が増す。

働く場所が変われば、見える景色も変わる。 見える景色が変われば、思考も変わる。 煮詰まっていたアイデアが、旅先で見かける何気ない風景から、ふと生まれることがある。 それは、パソコンの画面だけを見つめていた時には、決して得られなかったものだ。


自由の裏側にある「責任」

もちろん、この働き方が全て良いことばかり、というわけじゃない。 自由には、必ず「責任」が伴う。 自己管理を徹底しなくちゃいけないし、仕事とプライベートの境界線が曖昧になることもある。 特に、旅先では、ついつい遊びたくなってしまう。 そんな自分を律するのは、簡単なことじゃない。

でも、この働き方を始めてから、私は自分自身と向き合う時間が増えた気がする。 「今、本当に仕事をするべきか?」 「それとも、今は思い切り遊んで、リフレッシュするべきか?」 そうやって、自分の心と対話しながら、最善の選択をしていく。 それは、誰かに言われたことじゃない、自分だけの判断。

この自己管理の繰り返しが、私を少しずつ成長させてくれた。 そして、その成長が、仕事のクオリティを高めてくれる。 「自由」は、ただの怠惰じゃない。 それは、自分を律する力と、成長する機会を与えてくれるものなんだと、私は思う。


「新しい働き方」は、自分だけの「生き方」

ワーケーションやデュアルライフ。 そんな新しい働き方が、少しずつ世の中に浸透してきている。 それは、ただの流行じゃない。 私たちが、もっと自分らしく、もっと豊かに生きていきたいと願っている、その証拠なんだと思う。

大切なのは、誰かの真似をすることじゃない。 自分にとって、何が一番心地いいのか。 何が、一番幸せだと感じるのか。 それを、自分の手で探していくこと。

私にとってのワーケーションは、働く場所を変えること。 そして、働く場所を変えることで、自分の人生を少しずつ、デザインしていくこと。 それは、まさに「未来の自分」と出会うための旅だった。

毎日同じ景色に飽きてしまったあなた。 もし、少しでも「新しい景色を見てみたい」と思うなら。 まずは、隣の駅のカフェに、パソコンを持って行ってみてはどうだろう。 そこから始まる「ワーケーション」が、あなたの人生を、きっと少しだけ変えてくれるはずだから。

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旅するライター、WEBメディア「Credo」専属コラムニスト

東京生まれ、東京育ち。大手IT企業でウェブマーケティングを担当するも、日々のルーティンに「このままでいいのかな?」と疑問を抱き、30歳を目前に退職。現在は旅をしながら、Webライターとして活動中。 国内外を問わず、気の向くままに巡る旅が好き。旅先で出会う人や景色、そして美味しい食べ物からインスピレーションを得て、働き方や生き方、人間関係についてのコラムを執筆している。 「人生は一度きり。仕事もプライベートも、全部自分でデザインする」をモットーに、デュアル生活やリモートワークなど、新しい働き方を実践しながら、読者と共に「自分らしい幸せ」を探求している。

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