仕事と旅の境界線。オンとオフをどう切り替える?
どこからどこまでが「仕事」で、どこからが「旅」?
フリーランスになって、旅をしながら仕事をするようになってから、よく聞かれることがある。 「仕事と旅の境目って、どこにあるの?」 「旅先でも仕事しなきゃいけないなんて、疲れない?」
確かに、会社員だった頃は、仕事とプライベートの境界線は明確だった。 会社にいる時間は「仕事」。 会社を出たら「プライベート」。 物理的に場所が変わるから、気持ちの切り替えも、自然とできていた。
でも、今は違う。 旅先のカフェで、パソコンを開けば、そこが仕事場になる。 仕事が終わった後も、ついついメールをチェックしてしまったり、次の仕事のアイデアを考えてしまったりする。 旅と仕事が、シームレスに繋がっていく。
この境界線が曖昧になったことで、私は「オンとオフの切り替え」について、真剣に考えるようになった。 それは、自分にとっての「心地よいバランス」を見つける旅だったのかもしれない。
物理的な「境界線」を作る
まず、私が実践しているのが、物理的な「境界線」を作ること。 旅先でも、仕事をする場所と、リラックスする場所を分けるようにしている。
例えば、ホテルの部屋で仕事をするときは、ベッドの上じゃなくて、必ずデスクに向かう。 そうすることで、心に「ここは仕事をする場所だ」という意識が生まれる。 仕事が終わったら、パソコンを閉じて、デスクから離れる。 そうすれば、ベッドは「リラックスするための場所」という、本来の役割に戻ってくれる。
カフェで仕事をする時も同じだ。 集中して仕事に取り組む時間と、ただぼんやりと外の景色を眺める時間。 その二つを、意識的に分けるようにしている。 「この一杯のコーヒーを飲むまでは仕事」とか、「この章を書き終えたら、一度窓の外を眺めよう」とか。 そうやって、自分なりのルールを作っていく。
この物理的な「境界線」は、誰かに見せるためのものじゃない。 それは、自分自身のために作る、小さな儀式のようなものだ。
時間的な「境界線」を作る
物理的な境界線と同じくらい大切なのが、時間的な「境界線」を作ること。 旅と仕事、どっちも諦めないためには、オンとオフをきっちり切り替える必要がある。
私は、旅に出る前に、大まかなスケジュールを決めるようにしている。 「この日は仕事をする日」 「この日は完全にオフにして、旅を満喫する日」 そうやって、事前に決めておくことで、旅先で「仕事しなきゃ」という焦りや、「もっと遊びたい」という葛藤に悩まされなくなる。
もちろん、気分が変わることもある。 「今日は気分が乗らないから、仕事は休んで、ゆっくり散歩しよう」 そんな風に、臨機応変に対応することも大切だ。 でも、その日の終わりに、「今日はちゃんと休めたな」とか、「今日は集中して仕事ができたな」とか、自分で納得できることが、一番大切なんだと思う。
「オフ」の時間の質を高める
旅と仕事の境界線を曖昧にするのは、悪いことばかりじゃない。 旅が仕事のインスピレーションを与えてくれるように、仕事が旅の質を高めてくれることもある。
でも、一番大切なのは、「オフ」の時間の質を高めること。 せっかく旅に出ているのに、スマホばかり見て、仕事のメールを気にしていたら、旅の魅力に気づけない。 それでは、何のために旅に出たのか、わからなくなってしまう。
だから私は、意識的に「オフ」の時間には、デジタルデトックスをするようにしている。 スマホをカバンの中にしまって、旅先の景色を、自分の目で、心で、感じる。 旅先で出会った人たちと、スマホの画面越しじゃない、本当の会話をする。 そうやって、「オフ」の時間に全力を注ぐことで、私の心は、また新しいエネルギーで満たされていく。
境界線は、消えていくものじゃなくて、自分で引くもの
旅と仕事の境界線。 それは、会社員時代のように、きっちりと存在するものではなくなった。 でも、それは、境界線が「消えた」ということじゃない。 それは、「自分で境界線を引くことができるようになった」ということだ。
どこで働き、いつ休み、何を見て、誰と話すのか。 そのすべてを、自分でデザインしていく。 それは、まるで、自分の人生というキャンバスに、色を重ねていくような感覚。 そして、そのキャンバスが、より豊かで、より美しいものになっていく。
もし、今あなたが、仕事とプライベートのバランスに悩んでいるなら。 一度、その境界線を、自分で引き直してみてほしい。